区議会 第2回定例会 高岡じゅん子が一般質問を行いました。質問全文をご覧いただけます。

2022年6月14日

高岡じゅん子

 

令和4年 世田谷区議会第2回定例会 一般質問

 

初めに、持続可能な循環型社会に向けた世田谷区のごみ処理について質問します。

先月末開催された、東京二十三区清掃一部事務組合による、世田谷清掃工場建替計画(素案)説明会に参加してきました。150tのガス化溶融炉2基と灰溶融炉による現プラントを、一部事務組合は300tのストーカー炉2基に建て替える計画です。この計画には、生活者ネットワークは反対です。ガス化溶融炉を、技術が確立し安全に安定稼働が可能なストーカー炉へ仕様を変更するのは大賛成です。しかし、世界がサーキュラーエコノミーへの移行を加速する今、廃棄物を安易に焼却処理してCO2を出す現状から、CO2を発生させずに資源を再び利用する社会への転換が求められており、2030年以降に稼働する世田谷清掃工場の規模については、現状の150t×2基から増やすべきではないと考えるからです。

この建替は、令和3年2月に決定した令和16年度までの清掃一部事務組合の一般廃棄物処理計画によるものです。令和3年8月のIPCCの報告で地球規模の気候危機が人類活動によることが100%明らかだとされ、人類が生きていける環境を維持するためには残された時間がわずかであることが国際的な共通認識となりました。結果として令和3年の前後では、国際的なCO2削減目標は大きく前進し2050年までにCO2排出を実質ゼロにすることが世界目標となり、日本においても気候危機対策、SDGsへのコミットメント、循環型社会形成居向けたプラスチック資源循環法など、政府の方針も様変わりしています。現在の清掃一部事務組合の一般廃棄物処理計画には、東京都の打ち出したゼロエミッション戦略などの視点も取入れ切れておらず、計画の巻頭言にも「社会情勢に適応していくために適宜見直す」ことが触れられています。これから工事に取り掛かる世田谷清掃工場は当然、CO2ゼロの目標年である2050年時点でも現役の設備となります。さらに言えば、23区内で建て替えが必要となる、今後着工予定の14カ所の清掃工場を2050年時点でも環境都市東京にふさわしい真に循環型社会形成に資する設備にするには一日も早い方針転換が必要となっています。

気候危機宣言をした世田谷区は、平成30年に作った温暖化対策地域推進計画の全面的な見直しを進めています。清掃事業に関しても、23区全体が持続可能な循環型社会実現の推進力となるようこれまでの方針を見直し、働きかけを強める必要があると考えます。区の見解を求めます。

CO2をこれまで以上に排出する過大な焼却設備を新設せず、さらに区の収集運搬経費を削減するには、燃やすごみを減らすことが最大の解決策であり、これは省資源化、循環型社会の構築にも寄与します。みを着実に減らすためには、世田谷区として区民の協力を引き出すため更なる工夫や取り組みが必要です。区の見解を伺います。

国のプラスチック資源循環法への対応も含め、世田谷区のごみ処理の方針も次世代に持続可能な環境を残す方向へ変えていかなくてはなりません。今年度から始める清掃リサイクル審議会の進め方や委員構成、情報公開の予定について伺います。

 

次に、意図せぬ交雑の防止と生物多様性の保全について質問します。世田谷区は生物多様性地域戦略を作り、外来種移入種の積極的防除も行っています。動物に関しては、飼いきれなくなったアカミミガメを放すことが、生態系に良くないことは理解され始めています。植物についても外来種の意図せぬ繁茂が実際に起こっています。4月から5月にかけて世田谷区内のどこの道端でも見られるようになった小さなケシの花、ナガミヒナゲシなどは、空き地の修景用に園芸的に栽培されていた外来種が野生化したものです。かつてはどこにでも見られたカントウタンポポも、今では宿根草として根付いている限られた場所でしか確認できません。昆虫による交配で種ができるカントウタンポポは、純粋な種を残すことができず、新しく生えてくるタンポポは西洋タンポポとの交雑種になってしまっています。

今、ゲノム編集トマトなど、今までにない人工的に作られた植物の苗や種が市販されたり、実験的に配布されたりし始めようとしています。世田谷区内には、昔ながらのトマトの品種を自家採種で栽培している農家もあります。生物多様性に対する基礎的な理解の無いまま、目新しい品種を街中で育てることでは意図せぬ交雑を招く可能性があり、一度交雑した遺伝子は元に戻りません。少なくとも、区立の公園や区立学校など区有地での栽培は避けるべきだと考えます。

世田谷区として、植物に関しても慎重扱いが必要なことなど、区民と庁内の生物多様性に対する一層の理解促進を求め、区の見解を伺います。

 

最後に、孤立を防ぐ「生き心地の良い」まちづくりについて質問します。

「生き心地が良い」という言葉は耳慣れない言葉だと思います。この言葉は「生きづらい」の反対語として、自殺予防因子を研究している岡檀さんの著書『生き心地の良い町~この自殺率の低さには理由がある~』から引用させていただきました。世田谷区では今までも「生きづらさ」の軽減という視点を、若者や女性の暮らしやすい環境づくりなどに活かし相談支援の場の充実などを図って来ました。それでも、生きづらさを抱え続けた方が、本当に深刻な状況になって始めて相談つながるのが現状です。発想を変換し、自分たちが生きていきやすいまちのありかたを、まちづくりセンターを核にポジティブに探り出していくことはできないでしょうか。

『生き心地の良い町』の本の中では、孤立を防ぐ5つの自殺予防因子として、多様性の許容、人物本位の他者評価、自己肯定感、ゆるやかな人のつながりの4つが示されています。これらの視点は、世田谷区にもある程度共通のものではないか感じました。私にとって一番印象的だった5つ目の自殺予防因子は「病は市に出せ」というものです。これは、その町で言われる格言で、自分や家族の弱みを深刻にならないうちに周囲に伝えることを促すものです。これが、世田谷区に足りない視点ではないかと感じます。

まちづくりセンターは、地域住民に対する区の目・耳・触角として、孤立しがちな区民の問題を深刻にならないうちに察知することができているでしょうか。区民が様々な不安や疑問、相談を、28か所と身近な場所で、人の顔を見て話せる「まちづくりセンター」があることは世田谷区の強みです。気軽に足が向くサロン的な場としても、頼りになる相談先としても、もっと地域住民に認識され活用されるべきものです。

「(仮称)地域行政条例」素案にも、まちづくりセンターの機能の強化が書かれています。単身世帯が増え、孤立孤独対策が大きな課題となる中で、まちづくりセンターの果たすべき役割をどう位置付け、より区民に親しまれ利用されやすいものしていくのか。区の見解を伺います。

昨年のまちづくりセンターでのコロナワクチン接種予約のサポート活動は、IT前提の区の制度から取り残されかけた地域住民を、28のまちづくりセンターで支援し区民に非常に喜ばれました。今後、DXによる社会変容が進んでいく中でも、誰ひとり取り残さないことは非常に大切です。

一方、昨年度、国による初めての孤独孤立実態調査が行われ、20代30代で孤独や孤立を常に感じる割合が他の年齢層よりも高かったことが報じられています。こういった若い世代にとってはSNSやオンラインのほうが声をあげやすいのかもしれません。また、DXの様々なツールやアプリは、障がいやひきこもりの当事者など今まで区に対し声を届けにくかった人の声を聞き取れる可能性も秘めています。

世田谷区のDXを、区民に寄り添った行政サービスに活かしていくための、松村新副区長のビジョンを伺います。

 

 

(自席からの意見)

  • 松村信副区長には、世田谷区を区民の誰にとっても住みやすく、幸せを感じられるまちとしるため、DXの本質を理解した区政の変革をリードしていただくことを期待します。
  • 今後のごみ処理についてですが、国に対し大都市共通課題として支援や法整備を求めるだけでなく、二十三区清掃一部事務組合の一員として積極的に提言をしていくことを強く求めます。これから始まる審議会では、ごみ減量の取り組みを進めてきた区民など声をきちんと受け止め、多くの区民の理解と関心を引き出すようなオープンな運営を求めます。
  • ゲノム編集作物に関して、啓発と理解喚起進めてください。